直接死因と原死因の扱い

世の中にはいろんなニュースが流れています。

中には残念ながら、個人の死を報道するニュースも多くあるわけですが、、、

皆さんは「死因」と聞くとどういうイメージを持ちますか?

もっと言うと、そういった死因にまつわる報道について、“原死因”と“直接死因”の違いに意識して接しているでしょうか。

前述の通り、死因には2種類あって、簡単に言うと↓の通りです。

直接死因直接に死亡を引き起こした病態
原死因直接死因の起因となった病態

死因については、↑の記載が詳しいですね。

死因統計ではこのうち“原死因”を死因統計上の死因としてピックアップしているのです!

例えば↓のシチュエーションで考えると、

直接死因:急性呼吸不全
原死因:急性呼吸不全
※本来は原死因に“急性呼吸不全”が来るのはよろしくない

↑の場合は…

直接死因:急性呼吸不全
原死因:脳梗塞

こうなるわけです。

場合によっては、1つ目みたいに『直接死因=原死因』となることもあるわけですね。

さて、皆さんは↑みたいなことを知った上で、ニュースで表記される“死因”はどちらが多い印象ですか?

私もいろんなニュースを意識してみていますが、、、

これは圧倒的に“直接死因”を“死因”として表記しているニュースが極めて多いです。

しかし、上で学んだように、重要なのは“原死因”です。

だって、誰しも亡くなる時は心臓や呼吸が止まりますからね…。
(※だから原死因“心不全”や“呼吸不全”は不適とされています)

それなのに、心不全などの“直接死因”らしき病名が載っているニュースの多いこと多いこと…。

もちろん、医師の不手際で、原死因が本当に“心不全”となっているのかも知れませんけどね。。

我々法医学者も、もちろん原死因を重視します。

だって、原死因にこそ、死亡の根本的原因があるわけですからね。(上の2つ目のパターンで言えば、急性呼吸不全を防ぐんじゃなく、脳梗塞を防ぐことが重要となる)

死因にまつわる報道については、近年いろんな声もあります。

「公益性の観点から、芸能人の死因は積極的に公開すべきだ」
「芸能人であってもプライバシーがあるのだから、死因を積極的に世間に公開する必要はないんじゃないか?」

これには様々な考え方があると思います。

かといって、今の中途半端な死因報道の取り上げ方には、法医学者としてかなりの違和感を感じます。

やるなら全くの非公開にするか、公開するなら「心不全」みたいな“死因でない死因”は避けるべきなのではないか?と…。

そして、世の中の医師が正確に死因を記載するようになることを私は心から願っています。

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