故人の病歴確認の難しさ

近年、マイナンバーカードが健康保険証として使用できるようになりました。

まだ先の話でしょうが、今後、所持者の健康情報もマイナンバーと紐付けられるような時代がやってくるのかも知れませんね。

健康情報・病歴は、死因究明においても、最も重要な情報のひとつです。

それが抜け落ちてしまえば、下手をすると、真の死因を究明できないことだってあり得ます。。

“紐付け”に関しては、プライバシーの観点から賛否両論あるとは思うのですが、

法医学者としては、マイナンバーと健康情報の紐付けに関しては、正直大歓迎です。

何故なら、“故人の健康情報の把握”は、時としてとても困難であるからです。。

言うまでもなく、故人は自ら発言することはできません。(現実は語ってくれません…)

従って、それ以外の方法で健康情報を得るしかないわけですね。

その方法としては大きく下記の2つの方法があります。

・遺族等の関係者から、故人の情報を手に入れる
・警察から自宅にあるお薬手帳や診察券の情報を聞き、医療機関に問い合わせる

正直言って、実際のところ、これくらいしかありません。。

まず1つ目の方法について。

そもそも皆さんは、家族の病歴をきちんと把握していますか?

同居ならまだしも、例えば「遠く離れた実家の両親が、今、何の病気に対してどんな治療をしているか?」

これを理解できていますか?

もちろん即座にYesと答えられる人もいるでしょうが、案外No…と答えざるを得ない人もいるのではないでしょうか。

そして、近年は独居者も増えてきています。

独居者の場合、家族・親戚等との付き合いが希薄になっている人も多いですし、居ても健康情報は親類に全く知らせていない人も実際に多いんですよね。

ですので、皆さんが思っている以上に、1つ目の方法がうまくいかないことも結構あるんです。。

では、2つ目のように、「警察から聞いたら良いじゃん」と思うでしょう。

これにも欠点があって、、、

例えば「数日前に受診していた」みたいに、割と近い受診状況などは、自宅にお薬や診察券がすぐに見つかる場合もありますが、

受診をドロップアウトしたり、定期フォローが終わったりして、比較的期間が空いてしまうと、そういった情報が自宅から見つからないことも少なくありません。

そうやって、かつて受診していた医療機関の名前すら分からないと、当然我々は問い合わせもできないのでアウトです。。

そして、これは2つの方法に共通した話になりますが、

結局どちらの場合も「非医療従事者を介する」という点が大きなデメリットになります。

家族にしろ、警察官にしろ、基本的には医学知識のない方々ばかりです。

なので、病歴等の健康情報を持っていたとしても、

「肺の病気で、、、でも詳しい病名はわかりません」← 肺の病気にもたくさんある…
「確か不整脈はあったと思います。」← 何の不整脈?
「何か手術を受けたらしいんだけど、、、」← 本当に手術なのかな?内視鏡やカテーテル治療ではないか?

みたいに、言い方は悪いですが、“中途半端”な情報しか知らないことが殆どです。(無いよりは全然ありがたいですが!)

そんなあやふやな情報を鵜呑みにすることはできませんので、結局0ベースで死因究明を進めざるを得ないことになります…。

その点、医療機関からの情報は本当に助かります。

具体的かつ細かなところまで正確な情報を教えてくれますからね。

死因によっては、生前に診断されていないと、死因の特定が極めて困難なものもあります。

なので、そういった死因に関しては、特に医療機関からの情報は“必須”と言えます。

ということなので、長くなりましたが…我々法医学者としても、せめて「受診していた医療機関」までは何とかたどり着きたいんです。。

そこでもしマイナンバーと健康情報(受診状況)が紐付けされて、それを法医学者が確認できるようになれば、、、日本の死因究明のレベルがもっと上がるはずですッ!!

まぁ、、、紐付けされた健康情報に法医学者がアクセスできるようにまでなれば…ですけどね。。

死因究明の観点からも、是非今後この議論が深まっていってほしいです。

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