刑務所や拘置所での死亡

29日、草加警察署の留置場で71歳の容疑者が意識がない状態で見つかり、その後、死亡が確認されました。
警察は死因を詳しく調べるとともに「適正な留置管理に努めてまいります」とコメントしています。

警察によりますと29日午前11時ごろ、草加警察署の留置場で、道路交通法違反の疑いで逮捕された71歳の容疑者が意識を失っていることに別の容疑者が気づきました。
駆けつけた警察官が心臓マッサージなどを行いましたが、意識は回復せず、およそ9時間半後に搬送先の病院で死亡が確認されました。
容疑者は今月24日に逮捕され、28日の深夜に体調不良を訴えて病院に搬送されましたが、医師の診察の結果、入院の必要はないとして留置場に戻っていたということで、警察は、29日も容体が急変する直前に警察官が容疑者を目視で確認していたと説明しています。
警察は死因を詳しく調べることにしています。
草加警察署の○○副署長は「現在、原因を調査中ですが、亡くなられた方には心からご冥福をお祈りします。今後とも適正な留置管理に努めてまいります」とコメントしています。

草加警察署 留置中の71歳容疑者が死亡 死因を詳しく調査へ|NHK 埼玉県のニュース

皆さんはあまり意識しないかも知れませんが、実は↑のように“刑務所・留置場における死亡”がちょこちょことニュースに取り上げられています。

第九十三条 刑事施設の長は、被収容者が死亡したときは、その死体を検視するものとする。
 刑事施設の長は、前項の検視の結果、変死又は変死の疑いがあると認めるときは、検察官及び警察官たる司法警察員に対し、その旨を通報しなければならない。

刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則

法律上でも、刑務所や拘置所、留置場に入っている人が亡くなった場合、

通常の流れではなく、“刑事施設の長”という若位の高い人物が検視するようになっています。

これはもちろん刑事施設・留置施設のような“閉鎖的な”環境における死は、とりわけ注意が必要だからです。

そして、このようなケースは法医解剖になることが多く、

我々法医学者の元にもそういったご遺体がしばしばやってきます。

さて、冒頭のニュースに戻ります。

皆さんは刑務所や留置場で亡くなる方の死因は何が多いと思いますか?

「そんな閉鎖された環境で亡くなるなんて…職員の仕業だ!虐待だ!」なんて思う人ももしかしたらいるかも知れませんが、、、

実際のところ【刑務所・拘置所や留置場で亡くなる方の死因の殆どが“病死”】です。

私自身も病死以外はみたことがありません。

これは、近年は高齢の受刑者や拘留者が多いのも一因だとは思います。

前述のように、法医学者がこういった刑事施設・留置施設で亡くなる方を解剖する機会は、皆さんが思っている以上に多いです。

ただ『死因の殆どが病死』とは言え、

「そういった施設にいたからやっぱり精神的なプレッシャーがあったのかな?」
「もしかしたら、それが病死に影響してはいないのかな?」

なんてことを思ったりしないわけではありません。。

そして、また「持病に対する治療は適切だったのか?」という点も近年は重要です。

「施設に入っていたから、適切な治療が満足に受けられなかった」なんてことはあってはならないですから。

死因を究明する法医学者はそういったことも常に念頭に置いておかねばなりません。

『万が一』があってはならないので、こういった環境で亡くなったご遺体の解剖は法医学者もとても神経を使います。

それでも、、、“死因究明の番人”として覚悟を決めて頑張るのですーッ!!

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