なぜ法医学者に作家が多いか? 〜法医学者の定年後問題〜

日々多くの本が出版されています。

法医学の教科書に関しては、近年では出版が減り、さみしい時代ですが、

逆に法医学に関連したエッセイ・小説というのは、現代でも定期的に出版がされていますよね。

これは何故なのでしょうか。

法医学者には文才が多いから?

それもあるかも知れませんが、私はこの理由は他にもあると思っています。

  • 法医学は一般の方にも人気があるジャンルである
  • フィクションも織り交ぜることでリアルな法医学を伝えられる
  • (定年後を含めて)法医学から離れた後の働き口がない

この3点から考えていきたいと思います。

【法医学は一般の方にも人気があるジャンルである】

これはそのままの通りです。

嬉しいことに、法医学は一般の方々に人気のあるジャンルだと思います。

本だけでなく、ドラマや漫画のテーマによく取り上げられ、その度に話題となりますよねッ!

なので、必然的に「私も書いてみたいな」と思う法医学者が潜在的にいたり、

出版社も「法医学者に書かせてみようかな」と思うのかも知れませんね。

【フィクションも織り交ぜることでリアルな法医学を伝えられる】

法医学は“事実は小説よりも奇なり”です。

なので、法医学を取り上げようとした際、基本的には法医学者自身の経験を元にした内容となるわけですが、

プライバシーのこともあるので、自分が経験した内容をそっくりそのまま書いていくわけにはいきません。

その点、小説やエッセイはフィクションを加えやすいですよね。

とは言え、法医学者としては事実を元に書くので、一からひねり出すよりも大分楽です。

結果的にエッセイは手を出しやすい領域であると言えます。

【(定年後を含めて)法医学から離れた後の働き口がない】

法医学者が法医学から離れた場合、次なる働き口は実際のところ殆どありません…。

つまり、「法医学者は法医学でしか働き難い」ということです。

一般的な臨床医であれば、ある病院を離れても他の病院はもちろんたくさんありますし、

それまでの臨床経験を持って、全く別の分野に足を踏み入れることも不可能ではありません。

また、例えば大学教授として定年まで勤め上げたとしても、他病院の院長職や理事職などに就くことも少なくありませんよね。

一方で、法医学ではそうはいきません。

法医学の知識は、なかなか他分野で活かし難いです。。

また法医学にいる期間が長くなれば長くなるほど、臨床から離れてしまうので、臨床に戻るタイミングを逸してしまいます。

実際に『大学の法医学教授を退官した先生方の再就職?にはなかなか困る』という話も聞いたことがあります。

65歳なんて、まだまだ現役で働けるくらい元気な先生は多々いらっしゃいますからね。

かといって、解剖をできるのは大学の法医学教室くらいなので、「そこ(大学)を定年で出されると困ってしまう」というわけですね。

なので、代わりにといってはなんですが、定年後に本を出版する大先生も、ちらほらいらっしゃるのだと私は思うんですよ。

中には「定年までの生活に一区切り!」という思いで執筆される先生も多いとは思いますけどね。

時間もある程度あるし、それまで培ってきた経験もたっぷりありますからね。

まさに法医学エッセイを書くのに最も適した存在だと言えます。

そこに上記の1, 2といった理由が相まって、法医学エッセイは世の中に求められるのでしょう!

人生100年時代。

65歳で定年退職しても、まだまだ働きたいと思っている法医学者の先生も多いはず。

法医学者の大先生は解剖に熱心な先生も多いですから、そんな先生はなおさら退職後は第2の人生に悩むことでしょう。。

何か法医学知識を生かせる職は他にないものか?

私も今から考えておかねばならないのかも知れません…。

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