法医認定医研修施設について

ちょっと緊急でブログを書いているんですけど…。(言ってみたかっただけ)

ふと法医学会のHPを眺めていると、『法医学を志す皆様へ』と題したページを見つけました。

リンク → 日本法医学会「法医学を志す皆様へ

今回は法医学における認定医や研修施設について書いていきます。

認定医および法医認定医研修施設について

法医学に入って、まず目指すのが【法医認定医】です。

認定医とは、学会が一定の知識と技能に達していると判断した際にもらえる資格(※別途試験に合格する必要はある)であり、法医学者としてまず目指すべき目標とされます。

実際に『認定医を取得して初めて解剖を一人で執刀させる』という運用を行っている法医学教室も多いと聞きます。

それくらい法医学者として働くなら必須の資格です。

しかし、その認定医を取得するのに、どこでもかんでも法医学を学べばOKなのか?と言われればそうではなく、

一定の教育水準に達した施設で、きちんとした法医学教育を受けて初めて法医認定医の受験資格を得られます。

その“一定の教育水準に達した施設”というのが、今回テーマの【法医認定医研修施設】なわけですね。

研修施設認定を受けていない法医学教室

前述のように、法医学者の卵を、立派な法医学者(≒ 法医認定医)に育てるための“法医認定医研修施設”ですが、

私は「当然、全国の法医学教室が認定されているものだろう」と思っていたわけです。

だって、ただでさえ人の少ない法医学なのですから、仮にどの法医学教室に院生さんが入ったとしても、きちんとした教育が提供され、立派な法医学者を養成できなければ、その機会損失は莫大です。

ところが!

蓋を開けてみると、案外認定を受けていない、もしくは今後認定が外れてしまう法医学教室が全国に多数存在していたのです…。

「施設認定くらい受けてなくても良くない?」そう思う人もいるかも知れませんが、否中の否、全く良くないです。

法医学会のHPにも記載されているように「法医認定医研修施設での経歴がない場合は法医認定医の資格審査を受けることはできません」なのです。

認定医を申請するためにはいくつかの条件があるのですが、その中のひとつが↓です。

法医認定医研修施設に4年以上在籍して専ら法医学の研修を修了し、その期間中に200体以上の死体検案ないし法医解剖(いずれも補助を含む)の経験を有する者。ただし、そのうち法医解剖は60体以上であることを要す。死体検案・法医解剖数は初期臨床研修期間後に行った法医解剖数とする

つまり、、、施設認定のない法医学教室で法医学教育を受けると、その間の実績がごっそり抜け落ちてしまうのです。

これは若手法医学者にとってかなりの痛手となります。

だって、研修施設認定があれば、院生の4年間できちんと検案や解剖(補助)を経験すれば受験資格が得られるのに、

逆に施設認定の無いところで院生をすると、その間の経験は全くカウントされないんですよ…。

これはキツすぎでしょう。。

なので、研修施設認定されていない法医学教室は、実質的に院生が呼び込めないという事態に陥ってしまいます。

実際に法医認定医研修施設の認定を受けていない/受けられなくなる法医学教室

具体的な研修施設の認定状況については、法医学会のHP↓先の資料を見てください。

リンク → 日本法医学会「法医認定医研修施設について

PDF【別表1】に、〜2028年までの認定状況が掲載されています。(おそらく2024年時点データか?)

78施設中15施設(約2割)の法医学教室が、現時点から2028年までのいずれかの年に研修施設から外れます。

外れる理由には様々考えられます。

  1. 法医認定医研修指導責任者となり得る法医認定医研修指導医が勤務していること
  2. 申請の前年から過去5年間に年平均30例以上の法医解剖及び鑑定書または解剖報告書の作成を行っていること
  3. 法医解剖ならびに死体検案の検討会を開催していること
  4. 法医解剖ならびに死体検案資料が保管されていること
  5. 法医解剖ならびに死体検案業務関係施設・設備が整備されていること
  6. 研究・研修用図書が整備されていること
  7. 研修施設は日本法医学会の機関会員または賛助会員であること

↑これが研修施設認定の要件なのですが、結局その理由の多くが1つ目の要件に絡んだ【教授(≒研修責任者)の退職や異動に伴うもの】のようです。

法医学ブログ
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ここでも人手不足が関係してくるのかよ…。

先ほど書いたように、研修施設の認定が外れてしまうと院生も入ってこなくなるため、負のスパイラルが始まってしまいます。。

新・法医学を志す皆様へ

ということですので、これから法医学を目指す方(特に院生入学者)は、この“法医認定医研修施設”の認定状況をよくよく確認するようにしてください。

認定のない法医学教室へ入学面接に行っても、おそらくまともな教授であれば研修施設認定がないことを教えてくれるとは思いますが、

万が一何も知らずに入学して、入学後に施設認定が無かったり、途中で無くなってしまうことに気づいても時既に遅し。その後のキャリア設計を考え直す必要が出てきますからね。。

そして、同じ理由で、教授の定年時期もしっかり確認するようにしてください。(これもまともな教授なら、定年が近ければ伝えてくれるとは思いますが)

最後に

いやもう、本当に法医学はこれからどうなってしまうのか…。

不安がより増してしまった今日この頃でした。

何か不安なことがあれば、メッセージやXで私にいつでもご相談くださいね。

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