【SIDS再考】11月はSIDS対策強化月間です!

現実世界

11月は毎年SIDSの対策強化月間です。

  • 1歳になるまでは、「あおむけ」に寝かせましょう
  • 無理のない範囲で母乳育児を
  • 保護者等はたばこをやめましょう
  • 乳児のあたためすぎには注意しましょう

特に1歳未満のお子さんをお育てになっている親御さんは、上記4項目に気をつけてみてください。

さて、今回はSIDS/乳幼児突然死症候群について、最近の動向も踏まえてみていきます。

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SIDSとは?

そもそもSIDS/乳幼児突然死症候群とは何なのでしょうか?

「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」

学術的にはそう定義されている“病死”です。

要は「解剖を行っても原因不明な、主に乳児の突然死」ということです。

SIDSとは、他の死因をできうる限り否定した後にのみ下される「除外診断」による症候群と言えます。

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実は、近年日本ではSIDSによる死亡は減ってきています。

1990年代は、年間500人を超えるSIDSがありましたが、それが直近の令和7年では52人と、近年は50〜60人で推移しており、およそ9分の1にまで減少しています。

この要因は、平成期、精力的に行われた「うつぶせ寝防止キャンペーン」の影響も大きいと言われています。

特に1990年代〜2000年代にかけて「何の予兆もなく健康な乳幼児の命を奪う原因不明の恐ろしい病気」としてメディアで頻繁に取り上げられ、医学界でもそのメカニズム解明に向けて極めて活発な議論が交わされていました。

ただし、私はそれに加えて、SIDSという病名を付ける医師側の認識も変わってきたのが要因ではないか?と思うのです。

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SIDSは“病死”でいいのか?

冒頭に書いたように、SIDSは解剖と環境調査を経ても原因不明の死亡を指します。

私は思います…「いや、それは病死ではなく、原因不明にすべきでは?」と。

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確かに、SIDSと思われる死亡では、

  • 睡眠時に起こる
  • 好発年齢がある(1歳未満、特に生後半年以内)

といった傾向や、脳幹機能の低下などのリスクも研究レベルでは指摘されています。

そういう特徴を考えると、「何らかの病的異常」が生じた(≒ 病死)と考えたくなります。

逆に、本当に「原因不明/不詳」としてしまうと、それは「外因死の余地を残す表現」となりますし、学術的な側面としても「原因はわからない」と蓋をしてしまう可能性が高まります。

そういった観点から、安易な「原因不明」は避けるべきだ主張する研究者も確かにいます。

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しかし「安易なSIDS診断」も同じように問題です。(※適切にSIDSを付けている事例が問題ないのは言うまでもありません)

今でも「SIDSの診断には解剖や環境調査が必須」とされているのに、やはり現場では“疑い病名”として解剖や環境調査を経ずにSIDSを付ける(あるいは遺族に説明する)医師もいると聞きます。

そうしてしまうと、SIDS以外の病死(例えば、顕微鏡検査によって明らかになるかもしれない呼吸器感染)や外因死(例えば、うつ伏せ+枕による窒息死)を見逃してしまいます。

そこで出てきたのが、SUDIやSUIDという概念です。

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SUDIとは?SUIDとは?

SUDIとは【Sudden Unexpected Death in Infancy】のアクロニムです。

これまで元気だった乳幼児に起きた、予期せぬ(睡眠中の)突然の死「すべて」を指す広い概念です。

なので、「原因不明だった乳幼児突然死」(※後述のSUID)だけでなく、結果的に「原因がわかった予期せぬ突然死」も含みます。

具体的には、

  • 「寝具による窒息事故だった」という外因死
  • 「見つかっていなかった心疾患だった」という病死

などが判明したものなども含みます。なので、かなり広い概念です。

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SUIDは、【Sudden Unexplained Infant Death】の頭文字です。

定義は「原因不明な予期せぬ(睡眠中の)乳幼児突然死」となります。

純粋に「原因不明」というわけです。

なので、こちらでは「死因が判明した予期せぬ乳幼児突然死」は除かれます。

そして、結果的に原因は分からなかったものの、

  • 「そもそも解剖ができなくて十分な医学的調査ができなかった」
  • 「親が添い寝をしていたようだが、環境調査が行われておらず、医学的に窒息死の断定まではできない」

などの調査不足や分類不能なケースもここに入ってきます。

もちろん、SIDSもここに包含されます。

最も実務に沿った原因不明のグループと言えます。

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ちなみに、SIDSは、、、【Sudden Infant Death Syndrome】です。

SUIDと比べて、解剖や環境調査を行ってもやっぱり「原因不明な予期せぬ(睡眠中の)乳幼児突然死」※病死 となります。

従って、SIDSが最も狭い概念であり、なおかつ一定の病的異常があったものとして、「病死と判断される」という点は先の2者と違っています。

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近年はSUDIという概念が台頭しつつある?

さて、昨今はこども家庭庁の新設とともに、SIDSよりもSUDIという言葉の方が徐々に目立ってきている印象があります。

これにはやはり、上にも書いた「全例で解剖や環境調査を行った上で診断を付けるのはハードルが高い」という現場の実情を反映させたり、

「最初からSIDSのみを扱うのではなく、広くまずSUDI(乳幼児の予期せぬ突然死全体)をターゲットとした上で、細かな振り返りを進めていこう」という狙いもあると思います。

実際に、2024年に関連学会である「日本SIDS・乳幼児突然死予防学会」の名称が、「日本小児突然死予防医学会」に変更されたのも、その一環と言えるでしょう。

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「安易なSIDS診断」を避け、ある程度原因究明しても不明な突然死は、「SUDIとしてグルーピング」というのは、実状にも沿った流れです。

ふぅ、これで一安心、、、ではありません。

先ほど書いたように、ここで「原因不明」と判断して終わらせてしまったら、それは単に「蓋をしただけ」に過ぎません。

その後にきちんと振り返りが行われ、SUDIと判断されている状況から、SUIDやSIDSまで究明レベルを高めることこそが、SUDIという概念が生まれた根底の考えです。

SUDIとして、ひとまず処理した上で、その後、必ずさらなる死因究明・死因の議論が必須です。

それがチャイルド・デス・レビューに求められています。

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チャイルド・デス・レビュー(CDR)の重要性と壁

CDRとは、医療機関や警察、行政、児童相談所などが情報を持ち寄って、子どもの死に至った背景を多角的に検証し、効果的な予防策を導き出すための制度です。

これは決して「親の責任を追及する犯人探し」ではなく、予防策を打ち出し「未来の子どもの命を守るためのシステム」です。

最初から狭い「SIDS」に分類するのではなく、まずは「SUDI」という広い網をかけ、CDRの場で多機関が詳細に振り返る。

その結果、例えば「実は安全対策で防げた窒息死だった」と判明すれば新たな事故予防策が生まれますし、徹底的に調べても分からなければ、より精度の高い小児突然死の研究データとして蓄積されていきます。

CDRがうまく機能すれば、回り回ってさらに詳細なSIDSの病態解明に繋がるわけですね。

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しかし、現在の日本のCDRには、実は大きな壁があります。

それが「解剖率の低さ」と「解剖情報利用の難しさ」です。

会議室でいくら関係機関のお偉方が集まっても、その議論の基礎となる解剖所見や詳細な現場の状況データがなければ、結局「原因不明」から一歩も前に進めません。

そのためにも、まず「①解剖を実施すること」が求められます。

ですが、お子さんを亡くした家族にとって、解剖を承諾することへの心理的ハードルは依然高く、承諾の取れない事例では解剖実施が困難となります。

まだまだCDRや解剖に対する国民の理解が乏しい現状、さらなる積極的な広報が必要であることは言うまでもありません。

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そしてさらに、仮に遺族が承諾しようとも、解剖の中でも、警察主導で行われる司法解剖が行われてしまうと、捜査情報の兼ね合いもあって制度対象外となり、情報利用が実質的に不可能となってしまうのです。

(3)解剖により取得する情報の取扱い
〇司法解剖については、(2)に記載した通り、関係者の名誉・プライバシー等を保護し、捜査・裁判に対する不当な影響を防止する観点から、刑事訴訟法第47条及び第196条の趣旨に鑑みても、本事業の対象としないことが相当である。このため、司法解剖の結果は本事業の対象としない。

「都道府県Child Death Reviewモデル事業の手引き」より

この「司法解剖対象外」の影響の大きさをデータで見てみます。

2014〜2020 年に実施された法医解剖は74180例ありました。

その中で、18 歳未満の剖検例は3152例で、その中で司法解剖だったのは2386例(75.7%)でした。
※ちなみに調査法解剖は576例(18.3%)、⾏政解剖および承諾解剖は161 例、その他および不明が 29 例

つまり、乳幼児を含む18歳未満の法医解剖事例の75%以上が、制度対象外である司法解剖だったのです。

もちろん、0〜1歳に限ってみると、18歳未満全体とは違った傾向がみられるのかもしれませんが、それでも一定数の司法解剖が含まれることは明らかです。

現状のルールのままでは、「子どもの突然死における貴重な解剖データのうち、かなりの割合がCDRのテーブルにすら上がることがない」という致命的な欠陥を抱えていることになります。

当然、犯罪捜査に関わる司法解剖情報の利用制限が最優先されるべきなのは言うまでもありません。

しかし、捜査の機密は守るべきだとしても、そこから得られた「子どもの死を防ぐための純粋な医学的情報」まで完全にブラックボックス化されてしまっては、本来の目的である社会的な予防策の構築には繋げることができません。

従って、CDRを真に機能させるには、単に解剖の実施数を増やすだけでなく、「②適切に解剖情報を共有できる仕組み作り」が求められます。

現状のCDRには、こうした解剖を含む医学的・科学的な死因究明体制の抜本的な改革が絶対条件なのです。

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終わりに:原因不明で終わらせない社会へ

SIDSによる死亡が激減したことは、間違いなく社会の大きな前進です。

しかし、直近でも年間約50〜60人の命が失われていることは紛れもない事実です。

CDRの導入とともに「原因不明」という言葉に蓋をして思考を止める時代は終わりつつあります。

SUDIという枠組みで全ての子どもの死をすくい上げ、徹底した死因究明とCDRによる社会全体の振り返りを行う。

遺族に寄り添いながらも、事実を究明する社会システムをよりよく構築していくことこそが、残された命を救う次のステップなのだと私は考えます。

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