【徹底解剖】死因究明のための解剖制度すべて

解剖

「解剖」と聞くと何をイメージしますか?

法医学者?病理学者?解剖学者?警察?検視官?

様々なイメージが出てくるかと思いますが、その解剖の種類を正確に説明できる人はいないでしょう。

そこで今回は「これを読めば、確実に日本の解剖についてわかる!」という記事を書いていきたいと思います。

あっさり解説編

まず解剖の種類は、主に下記の6種類あります。

  1. 司法解剖
  2. 調査法解剖(新法解剖)
  3. 行政解剖(監察医解剖)
  4. 承諾解剖
  5. 病理解剖
  6. 系統解剖

司法解剖について

法医学者の行う解剖」のイメージとして最も強いものです。

これは「犯罪の関与がある、あるいはあると疑われるご遺体」に対して行われます。

「検察官や警察官」などが解剖の実施を決め、裁判官から“鑑定処分許可状”をもらった上で、大学法医学教室の教授等によって行われます。

従って、強制力があり「遺族の承諾は不要」です。つまり、もし仮に遺族が解剖を拒否する意向を示しても、警察は解剖を行うことができます

つまり「かなり強制力の強い解剖」と言えます。

調査法解剖(新法解剖)

これも先ほどと同様に、「警察が主体となって、法医学者が行う解剖」です。

犯罪が関与せず、死因究明が必要なご遺体」解剖対象となります。(※犯罪性があったり、疑われる場合は司法解剖となる)

許可状は不必要ですが、警察(署長)が必要と判断すれば、遺族の承諾なく解剖できます

強制力のある解剖ですが、「犯罪性がない」というのがネックになってきます。

行政解剖(監察医解剖)

これも割と有名です。別名「監察医解剖」ですね。

政令によって定められた地域(=東京都、大阪市、神戸市、名古屋市、横浜市)でのみ、“監察医”という役職を「都県庁内」に配置した上で、解剖させることができます。※実効的に行われているのは前3地域のみ

つまり、監察医は基本的には純粋な「公務員」です。

一応目的は「感染症や中毒、災害死などの死因究明」となっていますが、実際の解剖対象は、単純に「死因不明のご遺体」となっています。※ただし司法解剖や調査法解剖の対象となる者は除く

解剖の実施を決定するのは、警察関係者ではなく「監察医」です。

こちらも、遺族の承諾は不要ですが、実際は遺族のご意向に十分配慮しているそうです。

承諾解剖

この解剖は「監察医制度のない地域」において、「それを代替するために運用されている解剖」です。

なので、対象は同じく、(司法解剖や調査法解剖の対象を除く)「死因不明のご遺体」です。

ただし、行政解剖のように強制力を持つものではなく、あくまでも「遺族の承諾が原則必要」です。なので、遺族が拒否した場合は解剖できません。

病理解剖

今までの4つは基本的に法医学者が解剖するものでしたが、病理解剖は「院内の病理医の先生が執刀する」というのが大きな違いです。我々法医学者はノータッチです。

また「院外からの解剖依頼を受け付ける」というものではなく、「院内で亡くなった方を解剖する」ところがほとんどです。

もちろん、院内死であっても、司法解剖や調査法解剖の対象となる場合はそちらが優先されます。

医療事故調査制度では、この病理解剖を推奨していたりしますが、本来の主な目的は「院内で行った治療の効果判定や、死因の確認など」です。

系統解剖

これは全く趣が違った解剖であり、簡単に言うと「解剖実習で行われる解剖のこと」です。

つまり大学の解剖学教室などが主体となり、「医学教育のため」に行われています。

各大学に設置されている白菊会などを通じて、生前に「献体の意思」を明示していた人が亡くなった際に解剖対象となります。

防腐処理等の作業や、解剖実習までの待機期間があるため、実際に実習を終えて、遺骨となって遺族の元に返ってくるまでは、ある程度の年月がかかります。

以上が6種の解剖の簡単な説明です。

これ以上の詳しいことに興味がある方は、更に下記の文章も読んでみてください。

詳しく解説編

先ほどは「主に6つの解剖がある」として説明を書いてきましたが、実際はさらに2つの解剖があります。

それが広義の意味での「行政解剖の2種類」です。

  1. 食品衛生法による行政解剖
  2. 検疫法による行政解剖

これらはそれぞれ

  • 「食品衛生に関連した死亡が疑われるご遺体」
  • 「検疫感染症の有無の調査が必要なご遺体」

に対して行われます。

これら2種に“監察医解剖”を含めて、「行政解剖」とひとくくりに呼ばれることもあります。(※なので私は「監察医解剖」という表現の方が誤解しにくくて好んでいます)

また実は、根拠法について考えてみると、下記の4つは、どれも実は「死体解剖保存法」なんですよね。

  • 行政解剖:第8条
  • 承諾解剖:第7条
  • 病理解剖:第7条
  • 系統解剖:第7条(+ 医学及び歯学の教育のための献体に関する法律)

特に下3つは条文すら同じなんです。(※ちなみに司法解剖の根拠法は刑事訴訟法調査法解剖は死因・身元調査法です)

最後に、実際の解剖数をみてみます。

(令和6年中)
司法解剖:刑事関係 9911件、交通関係 526件
調査法解剖:刑事関係 3506件、交通関係 17件
その他の解剖(≒行政解剖+承諾解剖):刑事関係 6629件、交通関係 36件

令和7年版死因究明等推進白書より

(令和6年)
病理解剖:6245件

日本病理学会HPより

全国の大病院で行われる病理解剖の総件数より、各都道府県に数大学しかない法医学教室で行われる法医解剖の件数の方が多いことから、「如何に法医解剖は多いのか?」というのが、皆さんにも理解できるかと思います。

どうでしょう。皆さんこれで解剖の種類について他人に説明できるほど詳しくなれましたか?

きちんと正しい知識をつけて、改めて我が国の解剖制度を見つめ直してみてほしいですね!

もしわかりにくいところがあればどんどん追記しますので、是非ご意見等をください。

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