先日6月7日〜9日と、岡山で3日間開催された法医学会の総会が終わりました。(演題発表は2日間です)
感想を一言で言うと「大変満足度の高い学会だった」という言葉に尽きますが、今回の記事で少し振り返ってみたいと思います。
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学会概要

学会基本情報
学会名:第108次日本法医学会学術全国集会
開催日:令和6年6月7日(水)〜6月9日(金)
主管大学:岡山大学
開催地:岡山コンベンションセンター(※リンク)
参加費:下記画像の通り

満足度:★★★★☆
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開催地(岡山)は天気にも恵まれた
今回は岡山での開催でした。
会場となった“岡山コンベンションセンター”は、新幹線/在来線の岡山駅直結の大変好立地な学会会場でしたね。

開催期間中の天気もすこぶる良好で、むしろ良すぎて暑いくらいでした。笑
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会場の雰囲気は良き
今回の学会では、会場の1階と3階が法医学会による貸し切りでした。
1階はポスター発表と企業展示で、ポスター発表の部屋もゆったり空間で、演題を観るのに十分な間隔があって良かったですね。
3階は、同フロアにA会場・B会場が位置しており、移動もスムーズにできて素晴らしかったと思います。(※法医学会の会場は2会場で事足りるのです…)
こぢんまりとした法医学会にはうってつけの会場だったと思いますねー!
スタッフの方々(業者の方?)の動きも素晴らしく、学会全体を通して大きなトラブルもなく、スムーズに学会が進行できたのではないでしょうか。
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会場周辺にも満足
新幹線の駅前ということで、会場の周囲にはビジネスホテルが多く存在しており、予約にも特に困ることはありませんでした。
後述の懇親会場も、徒歩移動で十分問題のない距離でしたね。
飲み屋さんも複数ありましたので、学会後・懇親会後も物足りない法医学者達の欲望を丸っと包み込んでくれる街でもございました。笑
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学会テーマと各演題
テーマは…法医学者の国際化?

今回の学会のテーマはありませんでしたが、大会長のお言葉を聞くに、やはり「法医学(者)の国際化」がひとつ大きなテーマだったと感じました。
特別講演には、ドイツの法医学者が招かれており、私も色々と勉強させていただきました。
日本法医学会は、先人たちの流れからか、ドイツ法医学会との関係性が強く、日本とドイツで数年ごとに国際学会を開き合っています。(現在は定期開催できていない…)
今でも、法医学者の留学先のひとつとして、必ず挙げられるドイツは日本の法医学者にとっても切っては切れない関係ですね!
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ただ、会長委嘱講演でも指摘されていましたが、近年は法医学者の国際発表数が減っているそうです…。(私の耳も痛い。。)
やはり法医学の主戦場はヨーロッパや欧米。
日本への国際学会誘致も、運営の慣れや金銭的な問題などから、なかなか思うように進んでいないようです。。
講演の中では「国際学会が日本で開催された年は発表数が増えるので、もっと日本開催・招致を頑張りましょう!」という趣旨のコメントもあったのですが、、、
個人的には「そのためにも、まずは法医学者の日常業務の負担軽減を…」と思いました。。
もはや一大学が開催するには、あらゆる面で国際学会開催は荷が重すぎます。
地域の大学群や全国の法医学教室を挙げてサポートするくらいの支援が無ければ開催は現実的には困難でしょう。
もういっその事、『その時の理事長が中心となって開催する』という形で、学会挙げたイベントとして、今まで以上に持ち上げる必要があると感じます。
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また参加者目線で言えば、国際発表しようと思うとやはり「見栄えのする発表がしたい!」と思うのが研究者の人情でしょう。
でも、日々の業務が多忙のため、満足な研究時間を取れないという現実があるわけですよ。。

それに、そもそも忙しければ、海外出張もできません。
国内開催でさえ、「急な解剖が入ってとんぼ返りする法医学者」や「最終日しか参加できなかった」のような人がいるわけですからね。。
あと「国際学会を日本に!」も、上記のような根本的解決には繋がらないし、海外の法医学者にとって魅力的な学会運営ということを考えると、あくまで一時的なドーピングに過ぎないのかな…と思った次第です。
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もちろん、ここの法医学者が英語での発表などのスキルアップを図る必要性も大いにあります。
私も「もっと英語が喋れたらなぁ」なんてしょっちゅう思います…。

そんな私自身のことを考えても、もっともっと学会に要望するだけではなく、法医学者個人が努力する必要があるように感じますね。。
このテーマは、今後の日本法医学界が抱える大きな問題のひとつであることは言うまでもありません。
そういう意味で、素晴らしい問題提起になったと思います。
私も国内だけなく、国際発表も精力的に頑張っていかねば…ッ!
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各発表演題は例年通り
各演題のジャンルについては特段変わりなく、法医病理、法中毒、DNA、個人識別・物体検査…と、ほぼ例年通りだったように思います。
以前はCOVID-19関連の演題が結構あったりもしましたが、今回はそれほど目立っていませんでしたかね。
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かつては『全国集会では研究発表、地方集会では症例報告』みたいなことを煩く言う人たちもいたようですが、昨今は徐々に全国集会での症例報告も増えてきている気がします。
これ自体は、演者が全国の法医学者に知ってもらいたいと思い、運営者がOKするなら別に問題ないと思うのですが、
逆にこの傾向に「全国集会で発表する研究結果が無いからやむなく症例報告を…」という裏があるのなら、それもまた問題なのだろうですが。。
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個別の演題について取り上げることはしませんが、自分が発表するだけでなく、人様の発表を聞くことも良い刺激を受けるものです。
私自身もいろいろな演題に触れて、「今後の研究に活かしたい!」と思えるものがたくさんありました!
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演題数はやはり少なかった!?
今回、私が思う唯一?の残念ポイントがこの【演題数の少なさ】だったと思います。
開催前からその予兆はありましたが、実際もやはり演題数は少なく感じまてしまいました。。
今年は各機関の出題数制限が撤廃されました。
— 法医学ブログ@法医認定医 (@houigakublog) May 14, 2024
ざざっと目を通しましたが、結果は、、、
【昨年(第107次)】→ 学生発表21+口頭発表43+ポスター発表141=計205題
【今年(第108次)】→ 学生発表13+口頭発表42+ポスター発表121=計176演題… pic.twitter.com/HKGISXG6zw
運営がほぼパーフェクトだからこそ、逆に演題数における残念さがより目立ってしまう結果だったかも…。
学生演題の数も少なかったようで、座長の先生が最後にわざわざ言及されている姿も印象的でした。
【法医学(者)の国際化】どころか、「まず自分達の研究力を上げないと…」と思ってしまいましたね。。
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各種学会関連イベント
ランチョンセミナーは1社
例年は2日間で2社、つまり毎昼に企業のプロモーションを兼ねたランチョンセミナー(弁当会)があるのですが、今回は当初1社のみでした。
なかなか企業様も懐事情が厳しいのでしょうか…。
プロモーションはDNA関係の機器だったのですが、私のいるような弱小研究室には到底購入できない高額なものでしたので、「いいなぁ」と思いつつ、お弁当を頬張っておりましたよ。笑

なお、2日目も蓋を開けてみれば、結局“ランチプロモーション”という名の、実質同様のランチョンセミナーでした。
厳密には、時間を細かくセクションで分けて、それぞれ複数の企業や学会が自分たちの製品や学会をプロモーションしておりました。
学会の宣伝に来ていた臨床の先生も「近年は企業の懐事情が厳しい」と言っていたので、そうなのでしょうね。。
ちなみに、宣伝していた学会は“日本中毒学会”でした。
参考までに、↓にチラシを載せておきます。興味のある方はどぞ。

第46回 日本中毒学会学術集会:リンク
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懇親会は立食パーティー
前述の通り、懇親会は学会会場からほど近いホテルで行われました。
例年通りの立食形式です。

各々自由に円卓を囲って語り合います。
私もお世話になっている先生へのご挨拶を早々に終わらせ(←失礼)、
久しぶりに会った知り合いと会話に花を咲かせます。
懇親会自体は2時間くらいでしたかね。
結局、話し足りないので、後述のように飲み会へ行きました。
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食事はビュッフェ形式で、自分たちで取りに行きます、、、が!

毎年、参加者に比して食事が少ないのです…。
ひょっとすると、これが最大の残念ポイントか!?笑
まぁ、懇親会は食事ではなく、もはや知り合いとの会話がメインディッシュですからねー。
そんなことを気にする人も、会話の傍らでひたすら食べていた私くらいなのでしょう。笑
「食べきれないほど食事が出てくる」なんて懇親会を経験することは、この先果たしてあるのでしょうか。
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懇親会後の交流会(という名の飲み会)
懇親会後、法医学者は三々五々散って、仲の良い者同士で飲みに行きます。
私も友人とホテル近くの飲み屋さんへ移動します。

まぁね、、、出るわ出るわ、色んな人たちへの愚痴。笑
1年間溜めた愚痴を思い思いに吐き出します。
あ、もちろん将来の法医学についてきちんと?語ったりもしていますよ。笑
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懇親会も含め、学会での飲み会では、(法医学の)新人さんとご挨拶する機会も多いです。
私がお会いした院生さんは落ち着いている人ばかりで、みんなしっかりしていました。
ずぼらな私は恥ずかしくて、あまり発言できませんでしたよ。。笑
「こういう院生さんがきちんと法医学者になっていけば、法医学の将来も明るいのではないか!?」と感じた次第です。
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第108次全国集会に参加して(総括)
参加した感想
演題数が少なく感じたことを除いて、学会自体はとても素晴らしかったと思います。
これ自体は運営者が悪いわけではありませんからね。
むしろ、もっと我々参加者が盛り上げていかねばッ!!
私もまた次に向けて研究を頑張っていきたいと思います。
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それ以外には、私自身、特に不満はありません。(懇親会の食事量!)
それくらい満足感のある学会でした。
本当に運営の皆様方、、、お疲れ様でした&ありがとうございました。
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次回の全国集会は、、、久留米!
次回の第109次日本法医学会学術全国集会は、久留米で行われます。
久留米といえば、久留米ラーメンですかね。
新幹線も通っているということなので、こちらも好立地が予想されますね!
来年は演題数も持ち直しているのか…?
そんなことにも注目しながら、私自身も次回に向けてまた研究を進めて参りたいと思いますッ!!