法医学教室の資金問題とは?

最近、某大学の法医学教室に関する検査料の水増し問題が注目されました。

この問題の背後には、法医学教室の独特な財務運営も一因だと私は感じています。

法医学教室は、大学内でも特異な資金の流れを有しています。

前述の問題を受けて、該当大学は内部調査を行って、その結果を公式ウェブサイトで報告しています。

この報告には、教室の収入源を示す↑図が含まれており、それにより法医学教室におけるキャッシュフローの特殊性が理解できます。

今回はこの画像を軸に説明していきます。(※ただし、各地域や大学によって若干の違いがあり得る点に注意してください。)

法医学教室の収入は主に次の3つから成ります:

  • 【司法検査料】司法解剖検査料、測定検査料、分析料を含む。実施された検査に対する費用で、所属機関から提出される見積書に基づき、行われた検査に応じて支払われる。
  • 【司法解剖謝金】司法解剖を行った鑑定人(執刀医)への謝金。解剖にかかった時間に応じて支払われる。
  • 【死体鑑定謝金】:司法解剖に関連する鑑定書を作成・提出した鑑定人に対する謝金。鑑定書の作成に伴う判断料と、作成された鑑定書の量に応じて支払われる。

今回の問題は、これらの経費の中で、特に「①司法検査料」が焦点となりました。

一般に、この料金は警察から大学に支払われ、法医学教室に一定の割合で割り当てられます。

しかし、今回は実際に行われていない検査の費用を水増しして請求していた疑いがあります。

さらに、今回の場合は、死体検案書料などの大学への支払いが怠られていたことも問題視されています。

個人的には②や③といった“謝金”が鑑定人に直接支払われることすら、少し違和感を感じています。

例えば、勤務医は患者さんから直接料金を受け取ることはありませんし、開業医であっても保険診療の場合は、レセプトに基づく適切な手続きを経てやっと報酬が支払われるわけですからね。

一方で、法医学者は(大学から命令されたわけではなく)“警察”からの依頼で、“大学”の設備を借りて、勤務時間内に解剖を行い、それに対する謝金を個人が貰う…。

そう考えると、大学に所属している身で、警察から直に謝金を貰うという形は、やっぱり一般的な大学のお金の流れとは異なっています。

今回の事案を受けて、当該大学は検査料を含めた全ての収入を、大学を通して(正確には“病院の予算”として)処理することにしたようです。

「病院の経費」という点には多少の違和感があるものの、クリーンな予算運用には、確かにこの方法が最適なのかもしれませんね。

法医学は事件の解明や公正な裁判に不可欠ですが、本件のような問題があると、法医学の信頼性に影響を与えかねません。。

今回は調査結果の報告ということで公表されましたが、確かにこういったキャッシュフローが表に出てくることは実際にはかなり稀です。

しかし、こういったお金の管理・透明性の確保は社会的にも極めて重要なことなのです。

法医学教室の解剖経費の請求は正直複雑で面倒な作業ですが、今後は構造を含めて改善されていくことを私も期待しています。

この記事では、法医学教室のキャッシュフローについて解説しました。

他人事とは思わず、皆さんにもこの問題に注目していただきたいですね。

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