ご遺体に対する“耐性”について -私のケース-

先日匿名で以下のような質問が来ました。

これに対する私の回答が…

『「そういったいわゆる“耐性”的なものは、人それぞれなので一概に「貴方なら大丈夫です」とは言えません。ご自身で自覚されているように“個人差がある”からです。お力になれずすみません。」』

なんともまぁ、、、今読み返しても、最低な回答だなと思いますね。

なぜこんなに突き放す言い方をするのか…。

質問をくださった方、本当にすみませんでした。。

ということで、今回は改めて、ご遺体に対する“耐性”について書いていきたいと思います。

上記の回答を反省しつつも、本質的には「この回答に誤りはない」とは今も思っています。

ご遺体にも様々なシチュエーションの方がいらっしゃるので、死後変化が高度であったり、時には昆虫や動物の損壊を受けていたりするものもあります。

そうしたケースにおいても、冷静に向き合えるのか?

表現はあまり良くないですが、いわゆる“グロ耐性”があるか?

このあたりは『人それぞれによって違う』これが真実です。

ただ、それだけではない“経験値”的な要素もあると私は感じています。

私の場合、ご遺体を初めて目にした時点で、既にこの“耐性はある程度身についていたように思います。

初めてご遺体を目にしたのは祖母の死だと思いますが、医学生になった後で言えば解剖学の実習でした。

しかし、この両者はどちらも、世間で言うところの“きれいな”ご遺体ですよね。

そうではなく、もっと死後変化が進んだご遺体と出会ったのは、やはり法医学教室に頻繁に出入りするようになった後からです。

医学部の中学年だったと思います。

夏場に、高度に腐敗し、虫による損壊も強い、男性のご遺体の解剖に入ったのが初めてでした。

それまでも普通に解剖見学はさせてもらっていましたが、“そういう”ご遺体は、割と見学を始めてだいぶ経ってからだったように思います。

で、確かに、最初はギョッとしましたよ。

身体も腐敗により膨満し、何よりにおいがやっぱり独特ですので。

でも、それも本当に最初にだけで、すぐに慣れて、いつも通り冷静に解剖見学に入ることができました。

果たして、だからといって、「私は耐性のある特別な人だったのか?」は定かではありません。

前述のように、ある程度解剖見学を重ねた後の出来事でしたので、

そういう意味で「(通常の)ご遺体自体には既にすごく慣れていた」というのは、心理的にもかなり大きいような気もします。

要は“慣れ”もあるのかな、と。

私は普段から、決して度胸のあるタイプの人間ではないですので。笑

そのあたりは、教授が私に配慮してくれていたのかも知れませんね。

なので、法医学者としては、そういう配慮はしてもいいのかな、と。

また単に外見的な要素だけでなく、

  • 多数の切創のあるご遺体
  • 全身に痣だらけの被虐待児
  • 拒食症による飢餓のご遺体

など、精神的にもショッキングなケースにだって出会います。

また解剖見学の経験がある非法医学者の知り合いに聞くと、「においがどうしても駄目だった」と言ってたりもするので、

むしろそっちの方がNGと感じてしまう方も実際には多いのかも知れません。

私は大丈夫ですが、感受性の豊かだったりにおいに敏感なタイプの方は気をつける必要があるのかもです。
(※法医学者を目指しているわけではなく、単に興味で解剖見学に来た学生などは特に)

何にせよ、『人それぞれであるものの、“慣れ”もあるのかも

ということで、結局は、一度実際に経験してみなければ何も言えませんね。

誰だって、初めてがあるのですから!(私にだって)

なので奥せず、法医学者を目指してみる人が増えてほしいものですッ!!

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