死因も明らかなのに解剖が必要になる理由

死因には様々ありますが、中には“見た目明らかな”死因というものもあります。

例えば、、、

『ナイフで首の血管が切断され出た失血死』

『交通事故で全身の高度挫滅な外傷性ショック死』

『極度に痩せた衰弱死』

こういったケースでは、解剖をするまでもなく死因は見た目だけでもある程度明らかと言えるでしょう。

病院に搬送されていれば、ひょっとすると「搬送先の臨床医の先生が死体検案書を書いてもいいのでは?」と思う人もいるかも知れませんね。

しかし、その行為はNGです。

もちろん、そもそも異状死体の届け出をしなければならない状況なので、当然警察に行くことになるのですが、

それが無かったとしても、こういったご遺体の場合でも、法医学に回され、解剖が行われます。

それは何故なのでしょうか?

その理由のひとつが「今後裁判で争う可能性があるから」と私は考えています。

上記の1番目で見てみると、死因は解剖してもおそらく“失血死”でしょう。

しかし、それが他人によって行われたのか?自分で行ったのか?

そして前者だった場合、どのくらいの殺意を持って行ったのか?

これを法廷で明らかにしていくには、傷の特徴や状況から、受傷のシチュエーションを細かく推定する必要があります。

そして、そのシチュエーションが裁判を進めていく上で重要な資料の一つになります。

この傷の細かな観察を、日々多忙な臨床医の先生ができるでしょうか。

「忙しいから、ある程度ざっくりで…」は絶対に許されません。

そんなことをして、もし受傷時のシチュエーションが見えなくなったら?歪んでしまったら?

「犯人の殺意が証明できない」

「犯人とされている人の冤罪を証明できない」

こんな状況になってしまう可能性もあるわけです。

だからこそ、専門家である法医学者のところに回ってくるのですね。

法医学者の仕事は“死因の究明”だけではありません。

仮に、死因が既に究明されていたとしても…

裁判等のために死に関する情報を詳細に記録する

これも法医学者の重要な任務なのですッ!!

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