2025年6月11日〜13日の期間中に、久留米市にて日本法医学会の全国集会が行われました。
初日は理事会のため、実際の集会は2日間であり、私も後ろ2日間に参加し、精一杯勉強してきましたよ!
今回はその参加後記を書いていきたいと思います。
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学会概要

学会基本情報
学会名:第109次日本法医学会学術全国集会開催日:令和7年6月11日(水)〜6月13日(金)
主管大学:久留米大学
開催地:久留米シティプラザ(※リンク)

参加費:下記画像の通り

総合満足度:★★★★★
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当日の天気はまずまず
梅雨入り後にも関わらず、最終日は天気に恵まれ、むしろ暑さを感じるくらいでした。
中日には後述の懇親会があったのですが、その日は残念ながらの雨。
ですが、学会会場と懇親会会場がシームレスに繋がっていたため、天気の悪さはそこまで感じませんでした。
主催者から「クールビズ推奨」と言われていましたが、確かにそれで正解でしたねーさすがです。笑
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会場は駅からも近く良き

会場は、新幹線の久留米駅からそこまで遠くなく(バスで10分ほど)、立地は最高だったと思います。
会場近くには、ホテル群や飲食店・飲み屋街も集まっておりましたので、その点も良かったです。
あえて言うなら、施設のことくらいですかね。
発表会場は複数のホールに別れているわけですが、一部ホールへのアクセスが若干わかりにくかったくらいです。
あと、メインホール以外のサブ会場の規模がやや小さく、席にあぶれて立ち見する人が目立っていました。
無理矢理難癖つけるにしても本当にそれくらいで、全体的に満足感はすごく高かったです。
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学会テーマとシンポジウム・各演題について
今回も学会テーマは「無し?」
今回の学会では、特別に掲げたテーマ等は無かったように思います。
法医学会の学術集会では、臨床系学会によくあるような特定のテーマやキャッチコピーはないですね。
法医学はテーマが多岐にわたるため、変にテーマを絞ってしまうと幅が狭まってしまうリスクもあるのでしょうが、
個人的には『みんなが一つのテーマに沿って演題を出し合い、学会を創り上げていく』みたいなのも好きなので、少し一体感に物足りなさを感じています。
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シンポジウムは【性加害】と【災害対応】
キャッチコピーはなかったものの、シンポジウムの内容は【性加害】と【災害対応】でした。
2日目のテーマ【性加害】では、ドイツやアメリカからの演者が来日し、それぞれの国の性加害に対する法医学者対応の実情が紹介されました。
日本と比べると、各国の施設・設備がしっかり用意され、検査フローもシステマチックになっている点は羨ましかったですね…。
日本の演者は、科捜研の方と元検事さんによる講演でしたが、質問者の弁護士さんと後者の先生が言い合っていたのが、悪い意味で印象に残っています。。
完全に偏見ですが、こういった場の法曹関係者の演題は、解決のない水掛論が多いので、個人的にはあまり好きじゃないんですよね…。
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3日目のシンポジウム【災害対策】は、これまでの大規模災害対応を中心とした話でした。
これまでの大規模災害を実際に対応した法医学者が、それぞれの経験を講演してくださいました。
休憩無しのぶっ続けだったのは、正直、流石にしんどかったですが…。
でも、当然に内容は興味深く、大変勉強になりました。
個人的に頭に残ったのが「災害時はできる限り自分達だけで対応する方がやりやすい」という言葉でした。(本来、これが主旨でないはずですが)
これをお話された先生も「賛否両論はあるかと思いますが…」と断っていましたが、私も何となく理解できるような気がします。
『船頭多くして船山に登る』ではないですが、そういう混乱している時に、他所から来たお偉い先生達に好き勝手されてしまうと、全体として統一した行動が取りづらいですもんね…。
「混乱するくらいなら、多少オーバーワークになっても、統率の取れる自分達だけで対応した方がやりやすい」
そういうことなのかな?と私は感じてしまいました。
あと、心に残ったのは『災害準備に関して各法医学教室ができることは「用品の備蓄」くらいしかない』ということです。
これは複数の演者さんが語っていましたね。
先程の言葉には矛盾していますが、「自分達だけでできることは限られている」んです。
本来は他大学も協力して行動するのがベストですが、必ずしも統率の取れた行動ができるとは限らない、、、難しいですね。
そして、災害準備に関しては、東京都監察医務院の一強のようです。
他の地域・大学法医学で、医務院レベルの対策・準備が単独でできているところなんて絶対にありません。
予算規模が大きく、行政でもある東京都監察医務院だからこそできる芸当なのかな…と。
我々大学法医学ができることは【各大学間での協力】になってきますが、、、実際はどうなんでしょう?
このあたりは、災害対策における、今の法医学の大きな問題だと常々感じます。。
皆さん仲良くしましょう…。
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演題数は増えた
今年(109次)の全国学術集会の演題数は、、、
— 法医学ブログ@法医認定医 (@houigakublog) May 21, 2025
学生発表18+口頭発表66+ポスター発表135=計219題
今年は特に口頭発表の演題数がかなり伸びました!素晴らしいやでーッ!!
↓は去年/一昨年の演題数
【昨年(第108次)】→ 学生発表13+口頭発表42+ポスター発表121=計176演題
【一昨年(第107次)】→… https://t.co/ADTaWK4AxF
↑のポストの通り、前回に比べて総演題数は増えました。
これは素直に素晴らしいですよね!
全国集会というのは、“シンポジウム”と“演題”がダブル主役なのですッ!!
法医学の演題ジャンルは例年↓下記の通りです。
- 法医病理(研究/事例報告)
- 法中毒(研究/事例報告)
- DNA多型(研究/事例報告)
- 個人識別・物体検査(研究/(事例報告)
- 画像解析・画像診断(研究/事例報告)
- その他(研究/事例報告)
- 学生研究発表
これらジャンルは例年大きく変わっていません。
演題数としては【①法医病理】が最も多く、次いで【②法中毒】です。
それ以外では、DNA関係の演題がチョロチョロ、あとのジャンルはパラパラ…という感じです。
このあたりもここ数年は大きく変わっていない気がします。
正直、もっと深い研究をしたなら「各分科会で発表すればえぇやん!」と私も思いますもん。
前述の通り、全国集会は領域の幅が広いため、各演題テーマはやや浅くなりがちなので、
深い議論を希望するなら、結局各分科会で発表する方が議論も深まるでしょうし、フロアの関心も得られる気がします。
”全国集会”の位置づけってほんと難しいですね。。
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学生発表も面白い!
冒頭に書いた「席にあぶれる人が出た」というのが目立ったのが、実は「学生発表セッション」でした。
学生発表は最も大きなキャパを持つメインホールで行われたのですが、これは「学生発表セッションがそのキャパ以上に大盛況だった」とわけではありません。
その逆で、大ホールで学生発表セッションを行っているのに、他のセッションを聞くために別のホール(←キャパがより小さなホール)に行く参加者が多かったため、「(その先の)小ホールで立ち見が出ていた」ということです。
私自身は学生発表セッションにおり、後で友人にそれを聞いたのですが、少し残念な気持ちになりました。
だって、学生発表は皆どれもそれなりにクオリティが高いんですよ!?
学生の皆さんは、頑張って準備してきたんですよ!?
にもかかわらず、他の演題にたくさんの人が流れてしまうのは、本当に勿体ない気がするんです…。
私は、実際にこのセッションを拝聴して、発表者である学生さんの頑張り、熱意がヒシヒシと伝わってきましたよッ!
覇気のない、お経みたいな演題発表を聞くより何百倍も有意義では?なんて思ったり。
ただ確かに改善すべきポイントもあって、
- 発表スライドは3枚
- 発表時間は発表2分間
- 質疑応答は1つのみ
ポスターが発表のメインとはいえ、簡単な紹介としての口頭発表であっても、流石にこれ↑では、聞いている聴衆も理解が追いつかず、せわしないです。そして、何より学生さんが大変そう…。
せっかくクオリティの高い研究をやってきたのだから、ゆっくりしっかり発表させてあげる場を学生さんに与えてほしいです。。(スケジュール的に厳しいのかもしれませんが)
そうすれば、一般演題同様、いやそれ以上に大盛況になる可能性だって大いにあると私は信じていますよーッ!!

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各種学会関連イベント
ランチョンセミナーは3社4セミナー
ランチョンセミナーは、サーモフィッシャー、バイオデザイン、島津製作所の3社でした。
サーモフィッシャーは、2日間連続でセミナーの開催です。
今回はフードロスの観点から、基本的に事前予約が必要となりました。(私は結局外で昼食を取っちゃいましたが)
3社は分析機器や検査キットの会社であり、DNA型鑑定や法中毒学などの領域に関係しています。
やっぱりね、、、そういった高額な機器や納品実績の多い検査キットなど、「お金が生まれる分野」にしか、企業も手を出してくれないんですよねぇ、きっと。。(※企業を批判しているわけではありません)
だって、法医学の中で比較的大きなお金が動く分野は↑くらいですからねぇ…。
この厳しいご時世に、法医学のセミナーにお金を出してくれる企業様には感謝しかありませんよ。
法医学の中にも、そろそろビジネス的視点が必要だと思うのは私だけなのかな。。
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懇親会は出てすぐの広場で
懇親会は2日目終了後に行われました。
会場はなんと、会場の出口先にすぐある広場!(=六角堂広場)

そう! 雨よけの屋根(?)もあるので、雨が降ってもモーマンタイッ!!
もくもくと煙を上げる焼き鳥があっても、臭いにおいをプンプンと漂わせる豚骨ラーメンがあっても何のそのでしたね。笑
(私が勝手に)心配していた食事の種類や量もすこぶる豊富で、「物足りない!」なんて気持ちは生まれませんでしたー。
個人的には、ここ数年で最も雰囲気が良いと感じた懇親会でしたッ!!
でも盛り上がり過ぎて、会場閉鎖の案内がギリギリになっていたのはいかがなものか。笑
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懇親会後は三々五々で交流
懇親会終了後も、興奮の熱が冷めやらぬ人たちは、各グループに分かれて二次会に行きます。
多くの法医学者が散り散りバラバラになって、夜の街(←健全)に消えていきました。
先の通り、会場近くに居酒屋もたくさんあったので、お店には困りません。
ただ、平日ということもあり、若干閉店時間の早いお店が多かった気はします。(私は健全な時間に帰りたい派なので、むしろ助かりました笑)
にも関わらず、「朝まで飲んでた」なんて先生もいてほんとびっくりですよ。笑

また久留米という街自体がそうなのか、その、、、やや寂れている感もあったりして、商店街は若干シャッターが目立っていましたかね。
良い街だったので、今後ぜひ久留米市には盛り返してほしいです!
そして、ご当地キャラの【くるっぱ】ちゃん↓かわいい。笑

※久留米にはカッパにまつわる伝説が多いからだそうです。
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おみやげには正直悩んだ…
毎回の学会で結構悩むのが、教室への“おみやげ”です。
お留守番している先生方や事務さんだけでなく、もちろん家へのおみやげも。笑
、、、で結局、久留米みやげには何がよかばい?
うーむ、大変悩ましかったですよ…。
今回は学会会場にもおみやげ屋さんが出店していて、そこで購入している人もチラホラいました。
個人的に、くるっぱちゃんぬいぐるみがめちゃくちゃ欲しかったです…。
プライベートで旅行に行った時に買います!(←大き過ぎて持ち帰りに困るので今回は止めた笑)
結局、私は法医学教室には明太子味のバラマキお菓子、家にはチルドの久留米ラーメンを選択!!

皆さんは何を買いましたかー!?
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第109次全国集会に参加後に思うこと
参加総括
今回の久留米での全国集会は、総合的にレベルが高かったと感じました。
法医学会の現理事長の“意地”が、良い意味で垣間見えた気がしますね。笑
大会長は今年で退官だそうで、本当にお疲れ様でした。
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次回の全国学術集会は、、、北海道・旭川です!
来年の全国集会の開催地は、北海道旭川市です。
お、おぉ…旭川かぁ、と。
というのも、飛行機で行くことになるので、どうしても心理的距離感を強く感じてしまいます。笑
旭川市といえば、、、旭山動物園や旭川ラーメンですか。
北海道なら梅雨がないので、この時期の学会開催としては最適な地と言えるかもですね!
今から楽しみですーッ!!
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おまけ
「お前は遊びに行ってたのか!?」というお叱りに対して
ここまで読むと、「お前は遊びに行ってたのか!?」という声が聞こえてきそうです。
確かに、学会は楽しいことが多いです。久しぶりの知り合いに会えますし、美味しいご飯も食べられます。
この記事では、その楽しさを、少しでも多くの人に知ってほしいという想いで書いています。
詳細は書きませんでしたが、きちんと各演題を聴いていますし、自分自身も発表し、また一つよい経験をしたと感じます。
もちろんそれだけでは足りず、それをどのように活かしていくのか?が重要と言えます。
しっかりと学んだことを心に留めて、これからも法医学を頑張っていきたいと思っていますよ!
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〜ここが気になる法医学の学会〜
下記は、ずーっと私が法医学の集会で気になっていることです。
また機会があれば、個別記事で取り上げたいと思っています。
- 年始早々の早すぎる演題登録
- 会場でよく見かける【おじさん+やや若い女性】のペア
- 趣旨に沿わず、ひたすら自分の言いたいことだけ主張するシンポジスト
- 念仏のように、抑揚のない演題発表
- ひたすら自身の独壇場にしたがる質問者
- 時間が過ぎているのに発言する質問者
- 絶対覚えられないのに複数まとめ質問してくる質問者
- 演題セッションをコントロールしない、しようとしない傍観者の座長
- 弁当をもらいたいだけのランチョンセミナー参加者
- 企業ブースにある休憩所、飲料サービスの是非
おそらく、多くの法医学者が気になっていることなのでは…?笑
…
最後に
さて、この記事を最後まで読んでくれたということは、
「法医学会学術集会の雰囲気を知りたい!」
あなたは、そう思って読んでくれた方だと思います。
もしそうであれば、個人的には是非一度参加してみてほしいです!
来年は全国集会が北海道なので「なかなか足が出ない…」というのなら、各地方会もおすすめですよ!
地方会というのは、文字通り、各地方で近隣の大学法医学が集まって学術集会を開催します。
全国集会に比べると、地方会は演題も身近なものが多く、人の距離感や参加ハードル(心理的な意味でも経済的な意味でも)は低いので超おすすめです。
ただ一点だけ、注意しておくべきことがあります。
それは「是非引率する教官とともに参加してほしい」、、、つまり「単独での学会はあまりおすすめしない」ということです。
法医学教室と連絡を取ったことのない学生さんは、なかなかハードルが高いと思います。
しかし、単独で学会に参加しても、法医学の面白さは1mmも理解できないと私は思うんです。
シンポジウムや演題の内容を知ろうとしても、基礎知識がなければ本質を理解できません。
なので、そこを教官に補足してもらうのです!
また会場での出会いや懇親会といったイベントは、人と人との繋がりから生まれます。
その楽しさは、単独では絶対に味わうことができません!
だからこそ、そこは引率する法医学の教員にサポートしてもらってほしいのです。
興味のある研究をしている先生を紹介してもらえたり、場合によっては、その場で就職活動ができるかも知れません。
どちらにせよ、実際に法医学を始めたら、人と人との繋がり(=法医学者同士の繋がり)は避けて通れませんからね。
ですので、その「学会に参加してみたい!」という気持ちをうまく利用して、是非一度法医学教室の門を叩いてみてくださいッ!!