解剖見学で倒れないための方法

春になると、新生活が始まります。

法医学でも、新しく解剖に携わる人が出てきます。(少ないですが!笑)

そこでやっぱりチラホラいるのが、【解剖見学中に倒れてしまう】というシチュエーションですね。

初めに断っておきますが、これ自体は何も恥ずかしいことではありませんよ!

医学的には【反射性失神】(もしくは血管迷走神経性失神)という現象であり、誰にも起こり得る可能性はあります。(特に若年者が起こしやすい)

誰しも初めての経験はあり、そしてその日の体調や気分によって、誰であっても起こり得る可能性はあるわけですから。

とは言え、誰だって好き好んでそうなるわけではありませんよね。

倒れないのなら、それに越したことはありません。

今回はそんな方に向けて【解剖見学で倒れにくくなる方法】をご紹介していきたいと思います。

朝ご飯をしっかりと食べる

これは最大の予防策です!

解剖中で倒れた学生さんや警察官によく「朝ご飯を食べてきましたか?」と尋ねると、、、

「いや、いつも抜いてて食べてません…」

そんな答えが結構多いです。

しかし、それはナンセンス!!

解剖見学において、エネルギー不足・水分不足は大敵です。

必ず朝ご飯は食べ、解剖前にはしっかり水分補給をしましょう。

※ただし、途中でトイレに行きたくなるほどの飲みすぎには注意です。

これだけでかなり違いますよ。

前日は十分に睡眠を摂る

睡眠は最もリラックスできる方法の一つです。

寝不足は疲れが溜まるだけでなく、集中力が低下してしまいます。

倒れなかったとしても、それでは実りある解剖見学ができません。

解剖前日は緊張するかもしれませんが、早めにベッドに入って、しっかりと睡眠を摂りましょう。

(可能なら)解剖見学の流れを抑えておく

意外と軽視されがちですが、事前に解剖の流れを把握しておくと、解剖時の“初見感”が和らぎます。

“先の分からない恐怖”というのは、緊張してしまいますからね。

また解剖書などでサラッと臓器の位置関係などを予習しておくと、実際の見学でもスムーズに頭に入り、先程言った“既視感”と共に貴方をリラックスさせてくれるでしょう。

解剖中は立ちっぱなしを避ける

血管迷走神経性失神は、“立ちっぱなし”も発症の大きなリスクです。

見学中に許されるのなら、こまめに移動したり、立ち位置を変えてみる(ために動く)のもおすすめです。

また、もし解剖中に不安を感じた場合は、↓の画像のように【両手を組んで左右にグーッと引っ張る運動】をしてみてください。

これによって血圧が上がり、倒れることを防げると言われています。

※番外編 もし実際に倒れそうな気がしたら

悪心・嘔気、冷汗、 顔面蒼白、眼前の暗黒感などの症状は、倒れてしまう前触れです。

上記の症状を感じたら、躊躇なく周囲の人に申し出て休憩してください

間に合わない場合は、その場に座り込んで休んでも構いません

転倒によって負傷することが最も危険ですからね。

休憩の際は、しっかりと水分補給し、足を軽く挙げて横になって休んでくださいね。

無理に解剖見学へ再参加しようとしなくても全然大丈夫です。

やる気さえあれば、いつでも見学する機会は得られるでしょうし、安心してゆっくり休んでください。

あとがき

以上が【解剖中に倒れないための対策】+αでした。

どれも基本的なことですが、意外とできてない人も多く、とても重要です。

冒頭にも書いたように、これは“反射性失神”(血管迷走神経性失神)という現象で、一時的に血圧低下や徐脈が起きることで脳虚血が起こり、失神を来します。

その多くが1分以内に意識を回復し、予後も良く、安静にしていることで改善します。安心してください。

私の解剖でも、やはり倒れてしまう方や途中で退出する方が時々います。

何度も言いますが、それは見学者が悪いわけではありません。

それでも毎回、皆さんが「すみません」って謝るんです…。

「何が悪いねん!」
「あんたは全然悪くないで!」

そう思いながら、私はいつも接しています。

どうかこの想いが見学者の皆様に届き、少しでも安心して解剖見学に臨んでいただけることを心から願っています。

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